韓国の国営FM放送局「国楽ラジオ放送」の『夢見るアリラン』に生出演

2012-04-18


2011年12月23日、韓国の国営FM放送局「国楽ラジオ放送」(韓国伝統音楽専門ラジオ)の番組『夢見るアリラン』に加賀谷早苗と共に、陸根丙(ユック・クンビョン)さん、金勤中(キム・クンジュン)さんが生出演し、DVD作品「眠りへの風景」が紹介されました。パーソナリティの音楽評論家、尹重剛(ユン・ジュンカン)さんが韓国の伝統音楽の話題を中心に、楽しくお話しを進行する番組です。ラジオの内容を翻訳し一部ご紹介させていただきます。制作秘話もあり!!お楽しみください!
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2011年12月23日
韓国の国営FM放送局「国楽ラジオ放送」(韓国伝統音楽専門ラジオ)生出演
『夢見るアリラン』

韓国の国営FM放送局『夢見るアリラン』

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司会:尹重剛 音楽評論家

出演:加賀谷早苗、陸根丙、金勤中 通訳:林陽子

オンデマンドでもお聞きいただけます。「眠りへの風景」の紹介は73:32部分から始まります。


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クンクヌンアリラン
『夢見るアリラン』

(司会)今日は4名のゲストと一緒です。まず、日本からいらっしゃったお客さんからご紹介したいと思います。
(加賀谷)日本の舞踏カンパニー「友惠しづねと白桃房」の加賀谷早苗です。

(司会)次の先生も自己紹介お願いします。
(陸)私は現代美術家 アーティスト、陸根丙(ユック・クンビョン)と申します。
(金)私は画家の金勤中(キム・クンジュン)です。

(司会)通訳の方もご紹介お願いします。
(林)民族大学の林陽子と申します。

(司会)日本の方だったんですね。また同時通訳の感じも良いですが、視聴者の方が聞き取れなかったらまたもう一回話していただけますか?
(林)はい、わかりました。

(司会)ありがとうございます。今回日本と韓国のアーティストが共同作業した作品が出るそうです。「眠りへの風景」と言うDVD作品ですが、「眠りへの風景」はどういう作品なのか紹介お願いします。
(加賀谷)今回の作品は、私達舞踏カンパニー「友惠しづねと白桃房」と韓国のアーティスト、陸根丙さん、金大煥(キム・デファン)さんとご一緒に、実は94年に日本で公演したその時の音楽を基にして陸さんの新しい映像と共に創ったDVD作品です。

(司会)そうなのですね。舞踏は日本を代表する芸術の一つですね。実は伝統芸術ではないですが、伝統芸術のように認定されているのが舞踏です。その舞踏の大家、友惠先生がいらっしゃっています。陸先生に質問します。先生は色んな方との共演をなさっていますが、金大煥先生との出会いについて話してもらえますか?
(陸)金大煥先生とは1994年に正式に作業を伴う事になりました。その前にも何回かお会いした事はありました。その方の芸術的な器量と気質は私達に大きな影響を与えました。もちろん、音楽と美術では違いますがそのような方だったので一緒に作業する事になり光栄だと考えておりました。

(司会)なるほど。そしてその時、一緒に作業したものが今回DVDとして発売されるとの事ですね。
(陸)今回制作したものは、5年前ぐらいに私がオフィス友惠からオファーを受けました。

(司会)日本の会社からオファーを受けたのですね。
(陸)はい。オファーを受け、3篇の作品を作りました。その時の一つが金大煥先生の音楽で作業する事になりました。

(司会)先生から見る金大煥先生は一言で言うとどんな芸術家だと言えますか?
(陸)一言で表しがたいですが、その方の個性に予知力があると感じます。

(司会)予知力ですか?
(陸)その単語が常にメッセージみたいに浮かびました。簡単には説明できませんが、私はいつもそのことを胸にしめています。

(司会)金勤中先生を迎えています。先生はどのような経緯でこの作品に参加することになったのか教えてください。
(金)私は陸根丙先生とは長い間、友達です。一緒に美術展で展示したり、作業したりしていました。私は「體禅」と言う体を動かすムービング禅をやっていまして...

(司会)タイゼンですか?
(金)はい、からだを意味する「體」の字に、参禅の「禅」と書きます。ある日、私に陸先生から「日本からミュージックビデオ作品の依頼が入ったので、その作品の主演をお願いする」といわれまして...

(司会)よいしょ!
(金)それで出演する事になりました。

(司会)そうだったのですね。特別な縁があったのですね。では戻って、日本からいらっしゃった加賀谷早苗先生に伺います。まず、韓国のパーカニスト、黒雨・金大煥先生の音楽といいますか、芸術について先生からの見解を聞かせてください。
(加賀谷)私ども「友惠しづねと白桃房」の主宰者、友惠しづねは音楽家でもあります。踊りと即興のコラボをよくやります。そういう即興というものは国、民族、個性の違いを認めあいながら普遍的なものを共有できると思います。韓国の太鼓は非常に特徴的で力強さの中に民族の信念を感じます。舞踏も土着的な要素があります。金さんのその太鼓に非常にシンパシーを感じます。

(司会)そのような縁で一緒に作業することになりましたね。実をいうと韓国ではまだ先生が話してくださった舞踏と言う芸術を一般の方は知りません。今度は先生の芸術世界について我々に易しく説明してくださるようお願いします。
(加賀谷)舞踏は60年代に日本でできた新しい、日本で発祥した踊りです。日本人に根ざした体を追究しながら、人間の普遍的な在り方を追究しています。それによって世界の方との普遍的なコミュニケーションというものを考えております。

(司会)もっと詳しく知りたいですが、ここまでにしておきます。舞踏と言う、伝統ではないが、またもう一つの伝統を作る日本の舞踏は凄いと思います。色んな舞踏がありますが、舞踏は東洋的な深みと言いますか、暗い中でも奇怪な動作の中でも、生の真正性みたいなものを発見するように感じます。
ふっと、このような質問が浮かびます。陸さんと友惠しづねさんはどうやって知り合い、どんな作業を一緒にしたのでしょうか。陸さんに聞きます。

(陸) 私達は94年に出会いました。大阪の道頓堀にあるキリンプラザという美術館がありますが...

(司会)キーリンプラザですか?
(陸) "キリンプラザ"と言う、日本のビール会社キリンが作った場所があります。そこで私が個人展をやった時に「友惠しづねと白桃房」から公式的にオファーを受けました。弟子達と特別な公演をしたい、どうですかと言われました。実は考える必要もなかったです。そのテキストだけ見てもすぐ理解ができ、十分、一緒に呼吸できると思ったので快く共演を決めました。それをきっかけに今まで一緒に呼吸しています。その過程に先ほど話したようにミュージックビデオ3編に関して、再び私と一緒に作業したいと話して下さって、私としては確実に私に何かできる部分がありました。一緒に呼吸を合わせる事ができたので、そして私が思いきって話しますが、いい作品を作る為に努力しました。

(司会)DVD作品「眠りへの風景」を一言で言うとどんな作品ですか?
(陸) 静かな世界です。ですが静かな世界だと言って話しがないという事ではなく静かな話が十分存在するという事です。夢幻な要素もありますが、その夢幻は異常的に理解できるものではなく、人間世界で人間がいつも内面で夢見る世界、その世界を表出するものが音楽に秘められていたので、それが契機となって、映像化する事が出来ました。

(司会)韓国を代表する現代芸術家、陸根丙先生の新作映像と一緒に蘇る故金大煥先生の作品はこのDVD作品の中で見る事ができます。「眠りへの風景」と言うタイトルがついています。あと、これが副題だと思いますが「風と愛の神話」。こんな副題を付けましたよね。
(陸) はい、実は「水」、済州島で撮影したのは「水」と言う大きなテーゼがありました。智異山では「風」、ソウルは「都市」を意味します。都市では実質的で直説的な愛と言う技法があります。美しい愛はいつも大切だと思います。金勤中先生と共にこの3編を同時に撮りながらも都市圏で合わせた呼吸、愛が含まれている静かな世界を撮影した時が一番印象に残りました。

(司会)都市ソウルでそのような静かな世界を撮ったのが印象に残ったと言う事ですね。逆説的なものですね。
(陸) そうです。

(司会)金勤中先生、作業中はどうでした?
(金)最初、私はシナリオとかコンセプトなど、一切聞かされず。監督さんから何も教えてもらえなかったのです。

(司会)笑
(金)それで言う通りに演じる事しかできなかったのですが、その意味は分かっています。芸術と言うものは先に計画してしまうと人為的で操作的になるので即興性、意外性、無為性の為にそうしたと思います。その時々、刻々と、指示された通りに忠実に演技しました。
(陸)加えると偶然の中での規則です。偶然の中でも規則があると言う事です。先に、金勤中先生が話した通り、無作為だけどその中ではDNA的に動く規則があるという事です。

(司会)無秩序のなかの秩序みたいなものですね。
(陸)その部分が金勤中先生と一緒に作品を創りながら、その手にシナリオを渡していないけれど、順調に撮影ができた動機になりました。

(司会)わかりました。それでは、ここで金大煥先生の音楽を聞きたいと思います。
純粋な国楽音楽だけ聴いてきた視聴者の方はまだ慣れてないと思いますので、この曲について少し説明してくださいますでしょうか。

(加賀谷)これは公演の時の、金大煥先生のパーカッション、日本のフリージャズミュージックのトップミュージションである吉沢元治さんのベース、そして友惠しづねのギターによるトリオ、即興のトリオです。

〜 音楽「眠りへの風景」トリオ 即興演奏:金大煥先生-吉沢元治-友惠 〜

(司会)この演奏の中で何か見えるのもあったと思います。今は音楽だけ聴きましたが、視聴者の方々が気になるそのDVDの中で見られるのはそういうものでしょうか。
(加賀谷)3人が一緒に息が合って、その場が立ち上がると言う感覚でした。

(司会)このDVD作品は韓国と日本のアーティストで作業をしました。日本でこのDVDを作るために色んな工夫をなさったと思いますが、実際多くの人が買うものではないかもしれません。でもこのようなDVDを制作することは大きな意味があると思います。
(加賀谷)アジアのその文化の力、その可能性を示せたらと思いました。また、この作業を通じて私達のやるべき活動の方向性を改めて自覚することができました。大変密度のある時間をこの事によって共有できたと思います。

(司会)また画家の金勤中さんに伺います。先生の活動領域とこのDVDでの役割の関係についてどうお考えですか?
(金)私は絵を描く作業をしています。伝統民画の牡丹を現代的に解析する作業をしています。以前は色んな媒体を使用しました。絵から求められるものと今回DVDの中で主演として求められるものは同一しました。

(司会) 主演を強調しましたね(笑)。冗談ですよ!
(金)両方固定観念を破るような事をする。未開拓地、行ったことがないところに行く、常に新しいのを志向すると言う事では同じ事だと思います。

(司会)金先生のこれからの活躍にも注目しようと思いますが、今は亡き金大煥先生と一緒に作業したと言う事にも大きな意味があったという事ですよね。
(金)もちろんです。アンダーグラウンドでその方は素晴らしい方でした。あの方の世界は私を含め陸先生が追究してきたものと同類のものだと思います。大変尊敬しています。

(司会) 黒雨・金大煥先生はパーカッショニストとしても有名ですが、小さい米粒に細かく字を刻んでいた事でも有名でしたよね。その話も聴取者の方々に聞かせてください。
(金)私も実際にその方が百文字を超える般若心経を刻んだ所をみたことはないですが、聞いてすごく驚きました。音楽、ドラムをやる方ですが、その方はまた彫刻家でもあります。

(司会) 国楽放送の者として一つ添えるとしたら、金大煥先生は国楽音楽家のヘグム演奏者カンウンイル氏、ウォンイル氏、コムンゴのホユンジョン氏と一緒に作業をしてその方々にもフリージャズや現代音楽を伝え影響を与えた方なのです。 それでは私達がこの映像をどのような経路で手に入れる事ができるか教えてください。
(加)日本と韓国のジャズを専門的に扱うお店やアートショップなどで手にとる事ができると思います。そして金大煥先生の命日3月1日にちなんでお出ししたいと思っています。

(司会)金大煥先生の命日3月1日にこの作品に会えるのですね。実は韓国では3月1日の命日に合わせて公演をやっている事も皆さんに知って欲しいです。今はお亡くなりになりましたがこの方の影響でいろんな方が花を咲かせているように思います。陸先生に関する資料がまたこちらにあるようですが、是非紹介できれば良いと思います。
(陸)どの資料ですか?

(司会)先生の音楽とか作業とか準備できていると思いますが。
(陸)私の映像の作品は残念ながらラジオなのでお見せできないですが、準備したものがあります。

(司会)加賀谷先生から紹介してもらいましょう。
(加賀谷)94年の公演で友惠しづねが陸さんの美術からインスピレーションを得て作った作曲音楽、そして友恵しづねのインタビューに応える陸さんのその声が入っています。

(司会)ビジュアルな作品にオーディオがコネクトされたものなのですね!このような素晴らしいものを聞きながら今日はこちらで失礼します。今日お越しいただいた4人の皆様に感謝いたします。ありがとうございました。

〜 音楽「眠りへの風景」テーマ オリジナルバージョン 
    作曲:友惠しづね、友惠しづねの質問に回答する陸根丙の声 〜

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