韓国のアート誌「incubator」に『眠りへの風景』インタビュー掲載

2012-03-15

「incubator」
incubator 2012年3月号

韓国のアート誌「incubator」Vol.9(2012年3月号)に『眠りへの風景』のインタビューが掲載されました。

韓日コラボ アート・ミュージックDVD
陸根丙(ユック・クンビョン)氏と友惠しづねさんの友情によるプロジェクト
風と愛の神話、
2012年3月1日発売

日本の現代舞台芸術 "舞踏" が韓国と日本の芸術家を通して即興演奏と踊り、映像で生まれ変わる。芸術で最も必要な要素である人間性の衝突と調和を具現した「眠りへの風景」は緊迫する舞踏と即興演奏を通して、観客はもちろん演技者達にも存在に対する真理を問う。Editor Fete


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記事の本文 & 日本語訳
「incubator」の記事

韓国のアート誌「Incubator」からの質問への回答(日本語訳)


Incubator:<眠りへの風景>は友惠しづね氏との友情から始まったと聞いた。友惠しづね氏との出会いはどうであったか、また作業はどのように開始されたか。
ユック:友惠さんとは大阪の中心、道頓堀のキリンプラザ大阪で1994年に私の個展を開催する時に公式的な出会いを持つようになり、その縁をお互いに今まで育んできた。今回の作品も、その粘着性のある縁で、芸術の推進の方向性はもとより、お互いの共感が接続されていたから自然に推進されたのだ。

Incubator:特典の映像では、即興演奏する場面から始まり、スタッフと作業の話を交わす場面などを経て、踊りの映像が始まるが、前段の映像は撮影や編集が専門的によく整えられたというよりは生のままの映像である。これらは背景のストーリーとしてイントロではなくトラックの一番最後に置かれそうだが、これらを前に置いた意図は何か?
友惠:私は舞踏の舞台作品の創作家です。本作品のスペシャル・フィーチャーでは、自身の舞台創作家としての方法にのっとりコラージュの構成をとりました。


Incubator:"舞踏"という、日本の舞踊ジャンルは、韓国では見慣れない。舞踏と舞踏音楽について簡潔に説明してほしい。
友惠:舞踏も市販の欧米のポップ音楽を使う人が多いようです。そのために、踊りと音楽の関係が疑問視されることもありました。私達の先生であり舞踏の創始者とされる故土方巽の作品もそうでした。私の場合は自身が音楽家でもあるので、踊りの振り付けと音楽を同時に創ります。


Incubator:舞踏にいつ接し、舞踏に嵌ることになったきっかけは何か?
ユック:私の場合は、日本の禅思想について興味があった。それにより歌舞伎と現代化された舞踏のパフォーマンスに特別な愛心があった。

Incubator:舞踏と作品のメッセージが合流する地点は、まさに人間の普遍性を実現させることにあるようだ。多少難解で深遠なこのテーマをスタッフやダンサーたちとどのようにコミュニケーションしたのか?
ユック:単純に言えば、風は目に見えないが感じられる実体である。呼吸も風なのだ。

Incubator:<眠りへの風景>は済州島、大学路(ソウル)、智異山で撮影された。撮影を韓国で行った理由は何か?

ユック:場所についての特別な理由が重要なのではなく、音楽を私の方程式を持って解決していくことが重要であった。したがって、場所の意味は大きなものではない。

Incubator:撮影中にあったエピソードをいくつか話してほしい。(楽しみや苦労した瞬間)

ユック:非常に多い。済州島の撮影では、助演俳優が太陽に長く晒されたため熱中症にかかって急遽病院に行ったり、主演俳優と女優が水中から浮き出てくる撮影では女優は水泳が上手なのだが、俳優は水泳ができなかったので溺れそうになって一苦労した。それから智異山で山の頂上にある木から逆さまにぶらさがるシーンは使用しなかったが、撮影するのは非常に危険で、俳優たちはとても緊張していた。他にも面白かったことは、モーテルの部屋でのシーンを撮影するため、部屋を借りた。しかし、あまりにも多くの人が入って行くので変に思われて、拒否された事もある。おそらく、ポルノ映画を撮るんだと思ったようで...。ハハハ。これ以外にもエピソードは多い。すごく。

Incubator:夢幻的な音楽が流れ、大自然からの人が白い布を被って両腕を広げている。その上に夜明けの海で頭を突き合わせた男女がほとばしるシーンがオーバーラップする。これが<眠りへの風景>の最初のシーンである。両腕を広げている形状は十字を、海の中で立ち上る男女はアダムとイブを連想する。これは意図したのだろうか?

ユック:根本的な指摘だ。神聖な愛が何なのか私は分からなかったので、未経験者が憧れる世界というか、高貴な愛を劇的な演出として実装しようとした。アダムとイブを表現したわけではないが、いくらでも拡大解釈は可能だ。

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Incubator:個人的に映像が詩的に感じられた。想像の翼を思う存分広げることもでき、自由な解釈も可能だが、逆に、事前情報が無いと、多少難解なようだ。作業をしながら、最も心配になった部分は?シナリオやコンテがあったのかも気になる
ユック:まず、この音楽を聞いたら夢幻的だと感じる。音楽は基本的に見えるコードではなく、感じなければならないコードで形成されているので、約100回聞き、熟慮する過程を経た。特別なシナリオを設定する必要はなかったが、ストーリーボードは、構成することができる。私のDNAが即ちシナリオになったのだ。

Incubator:舞踏音楽が与える特有のストレンジな感じが映像に緊張感を与える。音楽と映像が共存しながら、且つどちらか一方に偏らないようにする演出はかなり大変だったのではないか。
ユック:そうだ。音楽に映像を合わせていくのではなく、音楽と映像が一度は衝突しながら、それに対して重要な映像のモチーフ構成達が穏やかに潜んでいる。

Incubator:現在ソウルで展示されている<Scanning the dream>、<DOCUMENTA 9>や前作の<Speed>に貫通するテーマがある。共存と調和、自然とシャーマニズム、あるいは無意識の超自我、このように接続された解釈についてはどう思うか?

ユック:同意する。明らかにそうである。

Incubator:韓国では、実際に舞踊やメディアアートは大衆的なジャンルではなく、<眠りへの風景>が商業的に大成功をおさめるのか疑問である。それでも韓国の観客のために作られた理由は?

ユック:指向性は、必要な部分である。明日がある理由である。

Incubator:日韓共同作業ということがこの作品を解釈するためにどのような意味で作用すると思うか?

ユック:私の個人的な意見は、胸のときめきではないかと思う。やや抽象的に聞こえるかもしれないが、遠く離れている恋人と呼吸するようなことではないかと思う。

Incubator:子供の頃、木で造られた家の穴から盗み見する特別な趣味が初期の作品の重要な根幹になったと知った。その時、木の穴を通して見ていた世界と、現在、裸眼で凝視している世界の最大の違いは?あるいは共通点があるなら何か?

ユック:不思議の国のアリスの世界をいつも懐かしく感じ、その開始は子供の頃からである。サンテグジュペリの星の王子さまのように世の中を見ることが私の習慣でもある。

Incubator:タイトルを<眠りへの風景>とした理由は?何か眠りが押し寄せそうなタイトルだが。
友惠:これはユックさんの作品から誘発されてイメージされたタイトルです。個人の中のある意識が眠りに入ろうとする時、それまで眠っていた隠された意識が目覚め始め、両者の混淆の中で人間の全体性がありのままに風景として表れる、そんなイメージです。


Incubator:<眠りへの風景>をひとつの文章にまとめたら?
ユック:覚醒の風景。

Incubator:<眠りへの風景>はどこで販売されるか?
ユック:オフィス友惠で推進中だから、そこからうまくやってくれると思う。

Incubator:<眠りへの風景>は劇場で封切りになったり、展示の計画があるか?

ユック:展示計画はあるが、慎重に考える。


Incubator:2012年3月以降、どのような計画があるか。

ユック:現在2013年の国連プロジェクトを準備中であり、おそらくすぐにプレスリリースが出るだろう。


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