「jazzpeople」2012年3月2日発行 第70号
韓国のジャズ専門誌

"一念三千"の瞬間に触れ合う

今から 18 年前、今は他界した即興音楽系の大物達に出会える貴重な映像が公開される。
舞踏家であり、演出家、ギタリストとして活躍している友惠しづねを主軸に、打楽器演 奏者の金大煥先生とベーシスト吉沢元治が 1994 年に繰り広げた公演「眠りへの風景」での実況が公開されたのだ。舞台上では金大煥先生のトレードマークになった黒いシャ ツとサングラス、そして中折れ帽子、指の間に通しているスティックが目に映る。先生のカリスマも変わりない。吉沢元治はボウニングと擦弦方式などを利用して音を仕上げ、既存のベースの限界を超え音楽をリードしている強い印象を残す。
音の変化を主導して いるのは吉沢だが、金大煥と友恵しづねが強いエナジーでサウンドのハーモニーを導い ている。友恵は陸根丙との会話で"一念三千"について言及しているが、彼らがその時に醸し出したサウンドこそ、その世界を瞬間に収めたのではないかというぐらい、短いが強い意味を残す映像だ。金大煥と吉沢元治が逝去した後に公開される映像だということが大きな意味をもたらす。